2025年11月5日、「現代用語の基礎知識」選による「2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」のノミネート語30語が発表されました。その中に「7月5日」という一見不思議な言葉が含まれており、大きな話題を呼んでいます。
なぜ特定の日付が流行語にノミネートされたのでしょうか。この記事では、「7月5日」がノミネートされた背景と、日本国内外に広がった社会現象について詳しく解説します。
「7月5日」ノミネートの理由とは
「7月5日」がノミネートされた理由は、「7月5日午前4時18分に巨大津波が起こる」とする噂がSNSを通じて日本や海外に拡散され、香港や台湾からの飛行機が減便・欠航する事態にまで発展したためです。
この噂には科学的な根拠はなく、気象庁や地震の専門家からは明確に否定されたデマでしたが、その影響は観光業にまで及び、大きな社会問題となりました。
津波デマの発端:漫画『私が見た未来』
このデマの発端となったのは、漫画家・たつき諒氏の作品『私が見た未来 完全版』(飛鳥新社、2021年出版)に記されていた「本当の大災難は2025年7月にやってくる」というメッセージです。
もともとの内容では、フィリピン沖での海底の噴火による大津波が日本を襲うという予知夢でしたが、SNS上で拡散される過程で内容が変化し、「7月5日」という具体的な日付と結びつけられていきました。
なぜ「7月5日」だったのか
著者のたつき諒氏がこの予知夢を見たのが2021年7月5日であり、あとがきに「夢を見た日が現実化する日ならば、次の大災難の日は2025年7月5日」と記述されていたことから、この日付が独り歩きすることになりました。
しかし後に著者自身が新たな著書で「過去の例から『こうなのではないか?』と話したことが反映されたようです。夢を見た日=何かが起きる日というわけではない」と軌道修正しています。
予言デマが引き起こした社会的影響
観光業への打撃
この予言デマは、特に香港で大きく拡散されました。日本政府観光局の発表によると、2025年5月の香港からの訪日外客数は前年同月比でマイナス11.2%となり、観光業に深刻な影響を与えました。
LCCのグレーターベイ航空は9月からの香港―米子便を運休にすると発表するなど、航空路線にも影響が及びました。
国を超えた拡散
予言は日本国内にとどまらず、香港や台湾、韓国などアジア各国に拡散し、一部では旅行のキャンセルや防災グッズの買い占めなどが発生しました。SNSの影響力がいかに大きいかを示す事例となりました。
気象庁の異例の対応
事態を重く見た気象庁の野村竜一長官が2025年6月13日に、この件について「デマであり、心配する必要はない」と公式に発表する異例の対応を取りました。しかし、噂の拡散を完全に止めることはできませんでした。
「7月5日」に隠された偶然の一致
興味深いことに、「7月5日」は、2025年にMLBドジャースのワールドシリーズ連覇に大きく貢献した大谷翔平選手の誕生日(1994年7月5日生まれ)でもあります。
この偶然の一致により、大谷選手が活躍した年に、まさかの形で彼の誕生日が流行語大賞にノミネートされるという皮肉な結果となりました。
デマが教えてくれた教訓
情報リテラシーの重要性
SNSによって拡散された予言は、大地震や富士山の噴火、隕石の衝突など、その形態を次々と変えながら膨張していきました。これは、情報が拡散される過程でいかに歪曲されやすいかを示しています。
予言の自己成就
「ある予言」が拡散されることで、拡散以前にはあり得なかった出来事が生じて、予言の内容と同等の影響を人々に与える「予言の自己成就」という現象も見られました。
実際に2025年7月5日の羽田空港は金曜日の午前中にもかかわらず激混みとなり、北海道方面と沖縄方面の便が特に混雑するなど、予言を信じた人々の行動が現実に影響を与えました。
防災意識の向上という副産物
著者のたつき諒氏は「高い関心は防災意識が高まっている証拠であり、前向きに捉えている。この関心が安全対策や備えにつながることを願っている」とコメントしています。
結果として何も起こらなかった2025年7月5日ですが、この騒動をきっかけに、多くの人が災害への備えや防災について考える機会となったことは確かです。
まとめ:「7月5日」流行語ノミネートが示すもの
「7月5日」が2025年新語・流行語大賞にノミネートされたのは、科学的根拠のない予言デマが社会に大きな影響を与えた現象を象徴する言葉だからです。
この出来事は、SNS時代における情報拡散の危険性と、デマに惑わされない情報リテラシーの重要性を私たちに教えてくれました。同時に、災害への日頃からの備えの大切さを改めて認識するきっかけにもなりました。
流行語大賞のトップテンと年間大賞は2025年12月1日に発表される予定です。「7月5日」が最終的にどのような評価を受けるのか、注目が集まっています。






コメント