2025年11月、中国の薛剣駐大阪総領事が高市早苗首相に対して過激な発言を行い、大きな波紋を広げています。「薛剣とは何者なのか」「どのような経歴を持つ人物なのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、薛剣総領事の基本プロフィールから経歴、そして注目を集める理由まで詳しく解説します。
薛剣の基本プロフィール
薛剣(せつけん、中国語:Xuē Jiàn)氏は、中華人民共和国の外交官です。基本的なプロフィールは以下の通りです。
- 生年月日:1968年7月生まれ(57歳)
- 出身地:中国・江蘇省淮安市漣水県
- 現職:在大阪中華人民共和国総領事(2021年6月~)
- 学歴:北京外国語学院日本学部卒業(1988年~1992年)
- 特徴:日本語に堪能な「知日派」外交官
薛剣氏は、中国外務省にあたる外交部で30年以上のキャリアを持つベテラン外交官です。日本語を専門的に学び、長年にわたって対日外交に携わってきた経歴から「知日派」として知られています。
薛剣の経歴【対日外交一筋30年以上】
薛剣氏の経歴を時系列で見てみましょう。
初期キャリア(1992年~1999年)
- 1992年~1995年:中国外交部アジア局に配属され、職員・アタッシェとして勤務
- 1995年~1999年:初めての駐日中国大使館勤務。アタッシェ、三等書記官を務める
大学卒業後、すぐに外交官としてのキャリアをスタートさせた薛剣氏は、配属後わずか3年で日本勤務となりました。この頃から日本との関わりが深まっていきます。
中堅期(1999年~2014年)
- 1999年~2006年:外交部アジア局で三等書記官、二等書記官、副課長を歴任
- 2006年~2012年:再び駐日大使館に戻り、一等書記官、参事官として勤務
- 2012年~2014年:外交部アジア局で参事官兼課長に就任
この時期、薛剣氏は在外勤務(日本)と本省勤務(北京)を交互に繰り返しながら、着実にキャリアを積み上げていきました。日本情勢に精通した外交官として評価を高めていったと考えられます。
幹部クラスへ(2014年~2021年)
- 2014年~2018年:駐日大使館で公使参事官という幹部職に昇進
- 2018年~2019年:外交部アジア局で参事官として勤務
- 2019年~2021年:外交部アジア局副局長に就任
2010年代後半には、中国外交部アジア局の副局長という重要ポストに就任しました。これは、対日外交における中国側の中心的人物の一人となったことを意味します。
現在(2021年~)
- 2021年6月~現在:在大阪中華人民共和国総領事に就任
大阪総領事は、東京の大使に次ぐ重要なポストです。関西地域における中国外交の責任者として活動しています。
2025年11月の炎上事件とは
薛剣総領事の名前が広く知られるようになったきっかけは、2025年11月8日深夜のSNS投稿です。
発言の経緯
2025年11月7日、高市早苗首相が衆議院予算委員会で台湾有事について答弁しました。首相は「台湾有事が存立危機事態になりうる」という見解を示し、一定の条件下では集団的自衛権の行使も可能との考えを表明しました。
これに対し、薛剣総領事は翌8日深夜、X(旧Twitter)で朝日新聞の記事を引用し、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」と投稿しました。
削除と その後
この投稿は批判が殺到したことを受けて9日に削除されましたが、すでにインターネット上で広く拡散されていました。駐在国の現職首相に対する「殺害予告とも取れる」内容として、日本国内で大きな問題となっています。
削除後も薛剣氏は「『台湾有事は日本有事』は日本の一部の頭の悪い政治屋が選ぼうとする死の道だ」などの投稿を続け、自身の立場を維持しています。
「戦狼外交」とは何か
薛剣総領事は、中国の「戦狼外交」を代表する外交官の一人として知られています。
戦狼外交とは、中国のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』に由来する言葉で、他国に対して攻撃的・威圧的な姿勢を取る外交スタイルを指します。特にSNSを活用して強硬な主張を発信するのが特徴です。
薛剣氏の場合、日本語が堪能であることから、日本語でのSNS発信を積極的に行い、直接日本国民に向けたメッセージを発信してきました。
過去の主な炎上事例
今回が初めてではありません。薛剣総領事は過去にも複数回、物議を醸す発言を行っています。
2021年:台湾問題での強硬発言
2021年10月、薛剣氏は「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ!!!」とXに投稿しました。この発言は、無所属の松原仁衆議院議員が質問主意書を提出するなど、国会でも取り上げられる問題となりました。
2024年10月:選挙介入疑惑
2024年10月の衆議院議員総選挙期間中、薛剣氏は「全国どこからでも、比例代表の投票用紙には『れいわ』とお書きください」とXに投稿し、れいわ新選組への投票を呼びかけました。
これは外交官による明らかな内政干渉として問題視され、日本政府が「極めて不適切」として抗議。中国側に削除を要求し、投稿は削除されました。
外交官は「接受国の国内問題に介入しない義務を有する」というウィーン条約の原則に反する行為として、国会でも議論されました。
その他の問題発言
- 2021年8月:アフガニスタンからの米軍撤退時、米軍機にしがみつく人々を揶揄する投稿
- 2021年:香港で国際人権団体が事務所を閉鎖した際に「害虫駆除」と投稿
- 2022年:ウクライナ情勢に関連して「弱い人は強い人に喧嘩を売るな」と投稿
日本政府の対応と今後の展望
2025年11月10日現在、薛剣総領事の問題の投稿は削除されていますが、日本政府が国外追放(ペルソナ・ノン・グラータ)の措置を取ったという情報はありません。
過去の事例では、日本政府は外交ルートを通じた抗議や投稿の削除要請にとどまっています。しかし、今回の発言は現職首相への脅迫とも取れる内容であることから、より強い対応を求める声も上がっています。
松原仁衆議院議員は「ウィーン条約に基づき国外追放すべきだ」と主張していますが、実際に国外追放という外交カードを切るかどうかは、日中関係全体への影響を考慮した政治判断となります。
まとめ
薛剣総領事は、30年以上にわたって対日外交に携わってきた「知日派」でありながら、「戦狼外交」の代表格として知られる外交官です。
日本語に堪能で日本情勢に精通しているからこそ、SNSを通じて直接日本国民に向けた強硬なメッセージを発信してきました。しかし、その発信内容はしばしば外交儀礼を逸脱したものとして批判を集めています。
2025年11月の高市首相への発言は、これまでの中でも最も過激なものとして大きな波紋を広げました。外交官としての立場を維持したまま、このような発言を続けることが許されるのか、日本政府の今後の対応が注目されています。
中国外交の現状を象徴する人物として、薛剣総領事の動向は今後も注目を集めることでしょう。






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