2025年12月15日、東京都港区赤坂の高級個室サウナで発生した火災により、30代の夫婦が亡くなるという痛ましい事故が発生しました。会員制の完全個室サウナという閉鎖的な空間で何が起きたのか、警視庁や東京消防庁の調査で明らかになった情報をもとに詳しく解説します。
この記事でわかること
- 赤坂サウナ火災が発生した店舗名と場所の詳細
- 火災の原因と被害者の死因に関する最新情報
- 事故発生から判明した設備不備の問題点
火災が発生した店舗「サウナタイガー」の概要
店舗の基本情報
火災が発生したのは、東京都港区赤坂6丁目9-13に位置する「SAUNATIGER(サウナタイガー)」です。東京メトロ千代田線赤坂駅から徒歩約5分、5階建てビルの2階から4階部分に個室サウナを展開していました。
2022年8月にオープンした同店は、「大人の隠れ家」をコンセプトにした完全個室・会員制のプライベートサウナとして運営されていました。利用料金は2時間で1万9000円(税抜)からで、月額会員制度では最高39万円のダイヤモンドプランまで用意されていた高級サウナ施設です。
施設の特徴と安全管理の実態
各個室には、サウナ室・水風呂・シャワー室・休憩スペースが完備され、完全プライベート空間でサウナを楽しめることを売りにしていました。しかし、後の調査でこの「プライベート性」が緊急時の発見や救助を遅らせる要因になった可能性が指摘されています。
火災発生の時系列
12月15日当日の経緯
午前11時頃:被害者の松田政也さん(36)と妻の陽子さん(37)が来店。11時から13時までの2時間プランを予約し、3階の個室を利用開始。
12時05分頃:運営会社の公式発表によると、この時間帯に館内で火災が発生。
12時25分頃:「非常ベルが鳴っている」と119番通報が入る。警視庁赤坂署と東京消防庁がポンプ車など22台を出動させて消火活動を開始。
13時20分頃:火災が鎮火。サウナ室内の壁や座席の一部が焼損したものの、建物全体への延焼は免れる。
消火後の発見:サウナ室の入口付近で、30代の男女2人が折り重なるように倒れているのを発見。女性が下になり、男性が覆いかぶさるような状態だった。2人は病院に搬送されたが、その後死亡が確認される。
被害者について
松田政也さん・陽子さん夫婦の人物像
亡くなったのは、川崎市幸区に住む松田政也さん(36・美容室経営)と妻の陽子さん(37・ネイリスト)の夫婦でした。政也さんは自由が丘に「株式会社GBG」を経営し、白髪ぼかし技術に特化した「脱白髪染めハイライト®」を商標登録するなど、美容業界で注目を集める経営者でした。
知人によると、政也さんは「まさやん」という愛称で親しまれ、同業者からも頼りにされる人望の厚い人物だったといいます。サウナ愛好家としても知られ、思考の整理や商談の場としてもサウナを活用していました。夫婦には小さな子どもがいたことも報じられています。
火災の原因
出火原因の調査状況
警視庁と東京消防庁の調査により、サウナ室内の木製ベンチ(背もたれと座面)が焦げていたことが確認されました。座席部分には「こぶし大の焼け跡」が数か所あったと報じられています。
専門家の見解では、サウナストーン付近にタオルなどの可燃物が接触して発火した可能性が指摘されています。現場からは燃えたタオルが発見されており、これが出火原因となった可能性が高いとみられています。
被害者の死因
司法解剖の結果
警視庁が実施した司法解剖の結果、2人の死因は「不詳」と発表されました。ただし、高温環境に長時間いたことによる熱中症、または焼死の可能性が高いとされています。
2人の体には軽度のやけどの跡がありましたが、命に関わるほどの重度の熱傷ではありませんでした。気密性の高いサウナ室から脱出できず、異常な高温環境で熱中症を発症したか、火災発生後の一酸化炭素中毒になった可能性が専門家から指摘されています。
ドアガラスを叩いた形跡
最新の報道によると、松田政也さんの手には皮下出血があり、サウナ室のドアにはめ込まれたガラスには擦られたような跡が確認されました。警視庁は、松田さんが拳で繰り返しガラスを叩いて助けを求めようとしたとみています。
事故の背景にある重大な設備不備
ドアノブの脱落問題
捜査関係者への取材により、サウナ室の出入り口に付いていたL字型の木製ドアノブが、内側・外側ともに外れて床に落下していたことが判明しました。このため、2人はドアを開閉できない状態で室内に閉じ込められた可能性が高いとされています。
さらに、店内の別のサウナ室でも出入り口のドアノブにがたつきが確認されており、施設全体の安全管理に問題があった可能性が浮上しています。
非常ボタンが機能していなかった
最も衝撃的な事実として、店のオーナーが警視庁の取り調べに対し、「非常ボタンの受信盤の電源を一度も入れたことがない」「触ったこともない」と供述していることが明らかになりました。
サウナ室内には非常ボタンが設置され、押すと1階事務室の受信盤でブザーが鳴る仕組みでしたが、受信盤の電源が切れていたため、2022年8月のオープン以来約2年間、全室で非常ボタンが作動しない状態だったとみられています。現場では非常ボタンが押された形跡がありましたが、機能していませんでした。
運営会社の対応
運営会社のSAUNA&Co株式会社は、火災発生当日の夜に公式サイトで謝罪文を発表し、当面の間営業を停止することを表明しました。原因については「現時点では詳細が確定していないため、推測を含む説明は差し控える」としています。
また、関係者によると、2024年12月に代表者が交代しており、新旧の経営陣が関与する別会社が2025年11月に業務停止命令を受けていたことも報じられています。
警視庁の捜査方針
警視庁捜査1課は、業務上過失致死容疑を視野に入れて捜査を進めています。具体的には以下の点が調査の焦点となっています。
- ドアノブが外れた原因と構造的な問題の有無
- 非常設備が長期間機能していなかった管理体制の問題
- 火災予防や緊急時対応のマニュアルの有無と実施状況
- スタッフの巡回や監視体制の実態
高温で密閉された空間であるサウナ施設では、火災発生のリスクを予見し、適切な点検と安全対策を講じる責任があるとされており、運営側の結果責任は重いと専門家は指摘しています。
サウナ利用者が知っておくべき安全対策
今回の事故を受けて、個室サウナを利用する際には以下の点を確認することが推奨されます。
- 入室時に非常口や避難経路を確認する
- 非常ボタンの位置と使用方法を把握する
- ドアの開閉が正常に機能するか確認する
- 焦げ臭さや煙を感じたらすぐに退出する
- 体調が悪い時は無理に利用しない
施設側には、安全対策や非常設備に関する情報公開、定期的な設備点検の実施、スタッフによる避難経路の説明などが求められます。
まとめ
赤坂の高級個室サウナ「サウナタイガー」で発生した火災は、ドアノブの脱落と非常ボタンの不作動という二重の設備不備により、30代の夫婦が閉じ込められて亡くなるという悲劇的な結果となりました。
プライベート空間を重視した個室サウナという業態の利点が、緊急時にはリスクとなる可能性があることが明らかになり、今後、業界全体での安全基準の見直しや、行政によるガイドライン策定が必要とされています。
警視庁は業務上過失致死容疑で捜査を継続しており、今後さらなる詳細が明らかになる見込みです。
(2025年12月18日時点の報道情報に基づく)



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