電気自動車(EV)の税金をめぐって、ガソリン車ユーザーとの間で「不公平」という声が高まっています。2025年12月16日、政府・与党は2028年5月からEVに新たな税負担を課す方針を発表しました。この記事では、なぜ税金の不公平感が生まれているのか、現在の優遇制度と今後の課税方針について詳しく解説します。
この記事でわかること
- 電気自動車とガソリン車の税負担の違いと不公平感の理由
- 2028年から導入されるEV新税の内容と影響
- 現在受けられるEVの税制優遇制度(2025年12月時点)
電気自動車の税金が「不公平」と言われる理由
ガソリン税がないEVと道路維持費用の問題
電気自動車とガソリン車の税負担で最も大きな違いは、燃料にかかる税金の有無です。
ガソリン車が払っている主な税金:
- ガソリン税(揮発油税):1リットルあたり約53.8円
- 石油税:1リットルあたり2.8円
- これらの税金に対してさらに消費税も課税される二重課税
一方、電気自動車は電気を使用するため、これらの燃料税を一切負担していません。ガソリン税だけで年間約3兆円の税収があり、その多くが道路の建設・維持費用に充てられています。
EVは優遇されすぎている?
2025年12月現在、電気自動車には手厚い税制優遇があります:
環境性能割
- ガソリン車:取得価格の0〜3%課税
- 電気自動車:2025年度末まで非課税
自動車税(種別割)
- 電気自動車:年額25,000円(1,000cc以下扱い)
- グリーン化特例適用で初年度は6,500円
- 東京都では2025年度末までの登録で5年間免税
自動車重量税
- エコカー減税により2026年4月末までの登録車は新車登録時と初回車検時が免税
- 2回目車検以降も減税あり
30年保有した場合の税負担差
ある試算によると、30年間車を保有した場合、電気自動車とガソリン車(総排気量3,000cc)では、税金だけで約120万円もの差が生まれます。
この大きな税負担の差が「不公平」という声につながっています。
2028年から導入されるEV新税とは
重量に応じた上乗せ税の導入
2025年12月16日、日本経済新聞などの報道により、政府・与党が電気自動車に対する新たな課税方針を明らかにしました。
EV新税の概要
- 開始時期:2028年5月から
- 対象:自家用の電気自動車
- 課税方法:自動車重量税に上乗せ
- 税額:車両重量に応じて設定、最大年間約2万4,000円
- 納税時期:車検時に徴収
なぜ2028年から課税するのか
政府がEVへの新税導入を決めた理由:
- 道路維持財源の確保:EVが普及するとガソリン税収が減少し、道路維持費用が不足する
- 公平性の確保:EVはバッテリーを搭載しているためガソリン車より重く、道路への負荷が大きい
- 税負担の不公平感解消:ガソリン車ユーザーとの税負担格差を縮小
業界からの反発も
この新税導入には経済産業省や自動車業界から反対意見が出ています。
反対理由:
- 日本のEV普及率はわずか数%にすぎない
- 欧州や中国ではEV普及促進のため課税をほぼ行っていない
- EVの普及を妨げ、カーボンニュートラル政策に逆行する
- 国際競争力の低下につながる
現在受けられるEVの税制優遇(2025年12月時点)
2028年に新税が導入される前の現在、EVには以下の優遇制度があります。
グリーン化特例
対象車種:電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、天然ガス自動車
内容:新車登録の翌年度の自動車税を約75%軽減
適用期間:2026年3月31日まで(2025年度末まで)
具体例:通常25,000円→6,500円(初年度のみ)
エコカー減税
対象車種:電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、天然ガス自動車
内容:自動車重量税を免税
適用期間:2026年4月30日までの新規登録車
具体例:
- 新車登録時:免税(通常22,500円〜37,500円)
- 初回車検時:免税(通常15,000円〜25,000円)
- 2回目車検以降:減税あり
環境性能割
内容:車の取得時にかかる税金が非課税
適用期間:2026年3月31日まで(2025年度末まで)
具体例:通常は取得価格の0〜3%が課税されるが、EVは0%
CEV補助金(2025年度)
税制優遇に加えて、国からの補助金も利用できます。
補助上限額
- 電気自動車:最大85万円(条件付き、通常は65万円)
- 小型・軽EV、PHEV:55万円
対象期間:2025年4月1日以降の新規登録分(令和7年度予算)
自治体独自の優遇
地方自治体によっては、さらに手厚い優遇措置があります。
東京都の例:
- 2025年度末までの新車登録で、自動車税が5年間全額免税
- 国の補助金と都の補助金を併用可能
今後のEV税制はどうなる?
エコカー減税の対象縮小も検討
2025年5月以降、エコカー減税の対象基準が厳格化される予定です。
変更点:
- 2030年度燃費基準の達成度が80%以上必要(現在は70%)
- 新車販売に占める対象車の割合が67%→47%に減少見込み
これにより、ハイブリッド車などの一部車種が減税対象から外れる可能性があります。
走行距離課税の可能性
将来的には「走行距離に応じた課税」の導入も議論されています。
走行距離課税のメリット:
- ガソリン車・EVを問わず公平に課税できる
- 道路を使った分だけ負担する仕組み
課題:
- GPSによる走行距離測定でプライバシー問題が発生
- 地方在住者や運送業の負担が重くなる
- システム導入コストが高い
まとめ:EVを買うなら今が最もお得
電気自動車の税金をめぐる「不公平」論争は、ガソリン税を負担しないEVと、道路維持費用の財源確保という構造的な問題から生じています。
現状(2025年12月):
- EVには手厚い税制優遇がある
- ガソリン車との税負担差は30年で約120万円
2028年5月以降:
- EVに新たな上乗せ税(最大年間約2万4,000円)が導入予定
- エコカー減税の対象も縮小傾向
EVの購入を検討している方へ:
- 2026年3月末までの登録でグリーン化特例適用
- 2026年4月末までの登録でエコカー減税(重量税免税)適用
- 税制優遇の面では「今が最もお得」なタイミング
ただし、2028年以降も従来のガソリン車と比較すれば、EVの税負担は軽い状態が続く見込みです。環境性能と経済性の両面から、自分に合った車選びをすることが大切です。


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