2025年12月、日本維新の会の複数議員による「国保逃れ」疑惑が浮上し、大きな波紋を広げています。一般社団法人を利用して国民健康保険料の支払いを回避していた疑いがあり、具体的な議員名や脱法的スキームの実態が明らかになりつつあります。
この記事でわかること
- 国保逃れ疑惑が指摘されている維新議員の具体的な氏名
- 一般社団法人を利用した脱法的な保険料削減スキームの仕組み
- なぜこの手法が問題視され、今後どうなるのか
疑惑が指摘されている維新議員は誰か
兵庫県議会議員2名が判明
しんぶん赤旗の報道により、以下の2名の兵庫県議が問題の一般社団法人の理事に就任していたことが明らかになっています。
赤石理生(あかいしまさお)兵庫県議
- 神戸市東灘区選出
- 日本維新の会所属
- 2023年と2024年に当該法人の理事として報告書に記載
長崎寛親(ながさきひろちか)兵庫県議
- 神戸市兵庫区選出
- 日本維新の会所属、政務調査副会長
- 2023年と2024年に当該法人の理事として報告書に記載
両県議は県議会議長に提出した関連会社等報告書に、一般社団法人栄響連盟の理事に就任していたことを記載していました。
その他の維新議員も関与か
報道によると、兵庫県議2名のほかに以下の議員も理事になっている可能性が指摘されています。
- 神戸市議1名(維新所属)
- 尼崎市議1名(維新所属)
合計4名の維新所属地方議員が関与している疑いがあり、一部の議員は国保逃れを認めているとの情報もあります。日本維新の会は現在、これら4名を対象に聞き取り調査を進めています。
疑惑が発覚した経緯
大阪府議会での追及
2025年12月10日、大阪府議会の本会議で自民党の占部走馬府議が、一般社団法人を利用した国民健康保険料の支払い回避スキームについて質問しました。
占部府議は質問の中で、以下のような衝撃的な内容を明らかにしました。
- 問題の法人の代表理事は維新の衆議院議員の元公設秘書である
- 理事は660名以上おり、維新の議員と同姓同名の人物が複数確認される
- 勧誘時に「維新の会の議員も多く利用しているので問題ない」と説明されていた
この質疑の様子を撮影した動画はSNS上で90万回以上再生され、大きな注目を集めました。
吉村代表が調査を指示
日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は12月17日、この疑惑について「幹事長に事実関係の調査を指示している」と述べ、党内調査を開始することを明らかにしました。
国保逃れスキームの全容
なぜ国保は高額なのか
国民健康保険は主に自営業者やフリーランスが加入する保険制度で、前年の所得に応じて保険料が決定されます。
高額所得者の負担は重い
- 2025年度の年間上限額は109万円
- 年収2,000万円を超える議員なら最高額の109万円を支払う必要がある
- 介護保険料を含めるとさらに負担は増加
一方、会社員や法人役員が加入する社会保険(厚生年金保険・健康保険)は、標準報酬月額をもとに保険料が算定されるため、報酬を低く設定すれば保険料を最低水準に抑えることができます。
脱法スキームの具体的手口
問題とされているスキームは、以下のような流れで行われていました。
ステップ1:名目だけの理事就任
- 実態の乏しい一般社団法人に名目上の理事として登録される
- 登記簿上は660名を超える理事が存在
- 実際の業務はアンケート回答程度
ステップ2:極めて低い理事報酬の設定
- 月額数千円から1万円程度の極めて低い理事報酬を設定
- これにより社会保険料を最低等級(月額数千円程度)に抑える
- 国保の年間109万円が年間数万円から十数万円に激減
ステップ3:協力金の徴収
- 加入者は「協力金」などの名目で一定額を法人に支払う
- この資金で理事報酬と社会保険料の法人負担分を賄う
- 実質的には保険料削減サービスの対価
ステップ4:形式的な体裁を整える
- 理事として登記し、形式上は適法な社会保険加入
- しかし実態は名義貸しで、通常の理事としての職務は行わない
どれだけ削減できるのか
入手された「コスト削減の提案」と題されたマニュアルによると、削減効果は以下のとおりです。
年収1,000万円超の弁護士のケース
- 通常:国民健康保険と国民年金の合計約146万円
- スキーム利用後:約60万円(86万円以上の削減)
年収2,000万円超の議員のケース
- 通常:国保年間109万円(最高額)
- スキーム利用後:年間数万円から十数万円程度
- 削減額:90万円以上
問題の一般社団法人「栄響連盟」とは
法人の基本情報
問題とされているのは「一般社団法人栄響連盟」です。
設立時期: 2021年9月
所在地: 京都市下京区(登記上)
代表理事: 維新の衆議院議員の元公設秘書(2023年兵庫県議選に維新公認で立候補)
理事数: 700名超(最新の登記簿による)
異常な組織形態
通常の一般社団法人では、理事は数名から十数名程度が一般的です。しかし栄響連盟は700名を超える理事が存在しており、これは極めて異例です。
実際の事業活動がほとんどない中で、これだけ多数の理事が存在することが、「保険料削減のためだけの名義貸し組織」ではないかとの疑念を強めています。
勧誘時の説明
関係者の証言によると、勧誘時には以下のような説明がなされていたとされています。
- 「維新の会の議員も多く利用しているので問題ない」
- 「合法的な節税スキームである」
- 「年間数十万円から100万円近く削減できる」
なぜこのスキームは問題なのか
制度の趣旨からの逸脱
社会保険制度は、実際に企業や法人で働く従業員や役員を対象とした制度です。実態のない名目だけの理事就任により、極めて低い報酬設定で社会保険に加入することは、制度の趣旨を大きく逸脱しています。
脱法性の指摘
弁護士からは「グレーゾーンまたは違法の可能性がある」との指摘が出ています。占部府議は「実質的な制度の悪用」「本来の趣旨を外れた脱法的運用」と批判しました。
問題点の整理
- 実態のない理事就任による形式的な社会保険加入
- 本来の所得に見合わない極端に低い報酬設定
- 社会保険制度の抜け穴を利用した保険料逃れ
- 真面目に保険料を支払う国民との不公平
政治家としての倫理問題
日本維新の会は「社会保険料を下げる改革」を政策の柱として掲げています。2024年12月には自民党との連立合意で「現役世代の社会保険料負担を含む国民負担の軽減」を盛り込みました。
なぜ問題なのか
- 政策では「制度改革で保険料を下げる」と主張
- 実際には自分たちだけ脱法的手法で保険料を削減
- 「身を切る改革」を標榜する党の姿勢との矛盾
- 有権者への裏切り行為との批判
今後の展開と影響
党内調査の進展
日本維新の会は兵庫県内の地方議員4名を対象に聞き取り調査を開始しています。
調査のポイント
- 理事としての実際の勤務実態があったか
- 報酬の額と業務内容は適正か
- スキームの違法性・脱法性の認識はあったか
- 党の関与や組織的な利用はあったか
現時点では詳細な調査結果は公表されていませんが、結果次第では処分が行われる可能性があります。
国会での追及が本格化
国民民主党の足立康史参議院議員は12月14日、この問題を国会の委員会で取り上げる方向で調整に入ったことを明らかにしました。
公明党の国重とおる衆議院議員も「疑念を払拭する明快な説明を期待する」とコメントしており、与野党を問わず追及の動きが広がっています。
制度改正の可能性
足立議員は、社会保険制度の抜け穴を塞ぐための議員立法の策定に取りかかることも表明しています。
想定される規制強化
- 実態のない法人での理事就任による社会保険加入の規制
- 理事報酬と実際の業務内容の整合性チェック強化
- 大量の理事を抱える法人への監視強化
- 罰則規定の新設
国民の反応とSNSの声
SNS上では批判的な声が多数上がっています。
批判的な意見
- 「事実なら大爆弾。議員辞職レベル」
- 「国保制度への裏切り。許されない」
- 「真面目に保険料を払っている国民を欺く最低の行為」
- 「身を切る改革はどこに行った」
冷静な分析
- 「違法ではないが脱法的。制度の不備が問題」
- 「氷山の一角では。他党にもいるのでは」
- 「政治家だけでなく一般の高所得者も利用している可能性」
まとめ
日本維新の会の「国保逃れ」疑惑は、兵庫県議の赤石理生氏、長崎寛親氏を含む複数の維新所属議員が、一般社団法人栄響連盟の理事という形式を利用して、高額な国民健康保険料の支払いを回避していた疑いがある問題です。
年間100万円超の国保料を数万円から十数万円に削減できる脱法的なスキームは、実態のない名目的な理事就任と極端に低い報酬設定により、社会保険制度の抜け穴を突いたものです。
社会保険料の負担軽減を掲げる政党の議員が、制度改革ではなく脱法的手法で自らの負担だけを削減していたとすれば、政治家としての倫理が厳しく問われることになります。
党内調査や国会での追及により、さらなる事実関係が明らかになることが期待されます。



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