2025年9月、サントリーホールディングス会長だった新浪剛史氏が辞任するという衝撃的なニュースが報じられました。その背景には、アメリカで購入したCBD(カンナビジオール)サプリメントが関係していると言われています。
この記事でわかること
- 新浪剛史氏のサプリメント問題の詳細と経緯
- CBDとTHCの違いと日本での法的位置づけ
- 2024年12月施行の法改正でCBD規制がどう変わったか
新浪剛史氏のサプリメント購入問題とは
事件の経緯
新浪剛史氏は2025年4月、アメリカ出張の際に現地の知人女性から勧められ、CBD(カンナビジオール)サプリメントを購入しました。新浪氏は適法だと確認したうえで購入したとしていますが、このサプリメントには日本で規制されている大麻由来の成分THC(テトラヒドロカンナビノール)が含まれていた疑いがあります。
新浪氏は当初、出張時に持ち帰る予定でしたが、ドバイ経由でインドを訪問する予定だったため持ち込みが厳しいことから、知人に日本への郵送を依頼しました。その後、知人が福岡県内に住む弟を通じて新浪氏にサプリを郵送しようとしたところ、この弟が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されました。
捜査の結果
2025年8月22日、福岡県警が新浪氏の自宅を家宅捜索しましたが、サプリメントは発見されませんでした。新浪氏の妻が怪しい郵便物は捨てていたためです。また、新浪氏自身も尿検査で陰性だったことが報じられています。
違法性が立証されなかったものの、新浪氏は「サプリメントを扱う会社のトップとしての認識を欠いていた」として、9月1日付でサントリーホールディングス会長を辞任しました。
CBDとTHCの違いとは
CBDは合法、THCは違法
大麻草には100種類以上のカンナビノイドと呼ばれる成分が含まれていますが、その中でも特に重要なのがCBDとTHCです。
CBD(カンナビジオール)
- リラックス効果や睡眠サポート効果があるとされる
- 精神活性作用を持たない(ハイにならない)
- 日本では合法的に利用できる
- サプリメント、オイル、化粧品などに利用されている
THC(テトラヒドロカンナビノール)
- 幻覚などを引き起こす精神活性成分
- 依存性があり健康被害の恐れがある
- 日本では「麻薬」として厳格に規制されている
なぜCBD製品にTHCが混入するのか
CBDとTHCは油分に溶けやすいなど性質が似ています。そのため、CBD抽出の過程で、THCが微量に残ってしまう可能性があります。これが今回の問題の核心です。
2024年12月の法改正で何が変わったのか
部位規制から成分規制へ
2024年12月12日、大麻取締法および麻薬及び向精神薬取締法の一部改正が施行されました。この改正により、CBD製品を取り巻く規制が大きく変わりました。
改正前(2024年12月11日まで)
- 大麻草の茎と種から抽出されたCBDのみ合法
- 花や葉から抽出されたCBDは違法(部位規制)
- THCの具体的な検出限界値は定められていなかった
改正後(2024年12月12日以降)
- 部位に関わらず、THC含有量で判断(成分規制)
- THCの残留限度値が明確に設定された
- 限度値を超えるTHCが含まれる製品は「麻薬」として規制
厳格化されたTHC残留限度値
改正法では、CBD製品に含まれるTHCの残留限度値が以下のように設定されました。
製品の種類別THC残留限度値
- 油脂および粉末:10ppm(0.001%)以下
- CBDオイル、カプセル、フェイスオイルなど
- 水溶液:1ppm(0.0001%)以下
- CBDドリンク、化粧水など
- その他:1ppm(0.0001%)以下
- CBDグミ、ベイプリキッド、バーム、クリームなど
これらの基準は欧米諸国と比べて極めて厳しい数値となっています。
罰則の強化
法改正により、THCの残留限度値を超える製品を所持・使用することは麻薬取締法違反となり、単純所持でも7年以下の懲役が科される可能性があります(改正前は5年以下の懲役)。
日本と海外の規制の違い
アメリカの基準
アメリカでは、THC濃度が0.3%以下(3,000ppm以下)のものは「ヘンプ」として規制対象外となっています。つまり、アメリカで合法的に販売されているCBD製品でも、日本の基準では違法になる可能性が高いということです。
ヨーロッパの基準
ヨーロッパでは、THC濃度が0.2%以下(2,000ppm以下)のものが規制対象外とされています。これも日本の基準(1~10ppm)と比べると、はるかに緩やかな規制です。
新浪氏のケースが示すリスク
新浪氏が購入したとされるCBDサプリメントは、アメリカでは合法的に販売されている製品だった可能性が高いです。しかし、日本の厳格な基準では違法となる微量のTHCが含まれていた疑いがあり、これが問題となりました。
「海外で合法」=「日本でも合法」ではないという認識が、今回の事件から学ぶべき重要な教訓です。
安全にCBD製品を利用するためのポイント
購入時の注意点
- 信頼できるブランドから購入する
- 第三者機関による検査結果を公開している製品を選ぶ
- 成分分析証明書(COA)が付いている製品を選ぶ
- THC項目を必ず確認する
- 成分表のTHC項目に「ND(Not Detected/検出されない)」と記載されているものを選ぶ
- 日本の残留限度値基準を満たしていることを確認する
- 海外製品の個人輸入は避ける
- 海外でCBD製品を購入しない
- フリマサイトや個人輸入業者からの購入は特にリスクが高い
違法製品を誤って購入するリスク
2025年5月には、福岡県の検査で「CBDグミ」として販売されていた製品に残留限度値を超えるTHCが含まれていたことが判明し、注意喚起が出されています。市場に出回っている製品でも違法なものが存在する可能性があるため、十分な注意が必要です。
まとめ:法改正後のCBD製品との付き合い方
新浪剛史氏のサプリメント問題は、CBD製品を取り巻く日本の厳格な規制環境を象徴する事件となりました。2024年12月の法改正により、CBD製品の合法・違法の判断基準がより明確になった一方で、規制はさらに厳格化されています。
覚えておくべきポイント
- CBDは合法だが、微量でもTHCが残留限度値を超えると違法
- 日本の基準は欧米よりもはるかに厳しい
- 海外で合法な製品でも、日本では違法になる可能性がある
- 信頼できるブランドの、検査結果が公開された製品を選ぶことが重要
CBD製品は、適切に製造・検査されたものであれば今後も使用可能です。むしろ、法整備が進むことで粗悪品や違法成分を含む製品が淘汰され、より安全な市場環境が整うことが期待されています。
ただし、「知らなかった」では済まされないのが法律です。CBD製品を利用する際は、日本の規制を正しく理解し、安全な製品を選ぶことが何より重要です。




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