この記事では東山むつき氏のプロフィールと2017年に起きたトレパク騒動の概要、そして漫画業界におけるトレパク問題について詳しく解説します。
また、トレースとは何か、著作権法上の問題点、そして参考やオマージュとの違いまで、分かりやすくお伝えします。
クリエイターと読者の双方が知っておくべき知識を、事例を交えながら説明していきます。
東山むつきとは?プロフィールと経歴
東山むつき(とうやま むつき)は、1975年1月23日生まれの日本の少女漫画家です。神奈川県横須賀市出身で、血液型はB型。
人気漫画『フルーツバスケット』の作者として知られる高屋奈月のアシスタントを務めた経験があります。
代表作は、秋田書店の『月刊ミステリーボニータ』で連載された『炎人(かじん)』です。この作品は2001年に単行本第1巻が発行され、全12巻で完結しました。
物語は、相手の身体に触れることで精神に「潜水(ダイブ)」し、心の病を治療する主人公・早乙女煌を描いた心理サスペンス作品です。
2012年1月からは続編『炎人 UNDERWORLD』の連載が開始されましたが、諸事情により未完のまま連載終了となりました。
2017年のトレパク騒動とは
東山むつき氏が注目を集めたのは、2017年1月にTwitter上で展開された騒動です。自身の作品が複数の有名漫画家によって「集団トレース」されていると主張し、検証画像を大量にアップロードしました。
名指しされた漫画家には、『FAIRY TAIL』の真島ヒロ氏、『クジラの子らは砂上に歌う』の梅田阿比氏、『薔薇王の葬列』の菅野文氏などが含まれていました。東山氏は「線画が一致した」としてトレースチェックを行ったと主張しています。
しかし、この騒動に対して名指しされた漫画家たちからの反応はなく、出版社からも公式な声明は出されませんでした。
SNS上では検証画像を見た多くのユーザーから「構図の類似はあってもトレースとは言えない」「よくある構図では」といった指摘が相次ぎました。
2021年5月、東山氏はTwitterの運用について謝罪し、同年7月にアカウントを削除しています。
漫画業界におけるトレパク問題の基礎知識
トレパクとは、「トレース」と「パクリ」を組み合わせた造語で、他人の作品を無断でなぞって自分の作品として発表する行為を指します。
トレパクが問題視される理由は、オリジナル作者の努力や独自性を無視し、その成果にタダ乗りする行為だからです。クリエイティブな作品には作者の時間、技術、センスが反映されており、それを無断で利用することは作者の権利を侵害します。
著作権法上の問題点
トレパクは著作権法における「複製権」「翻案権」「公衆送信権」を侵害する可能性があります。ただし、すべてのトレース行為が違法になるわけではありません。
- 私的利用の場合:個人で楽しむ分には問題なし
- 著作権フリー素材:権利者が許可している場合は使用可能
- 創作性のない部分:誰が描いても同じになる構図やポーズは保護されない
重要なのは、単なる構図の類似とトレースは別物だという点です。法的にトレースと認められるには、線画が完全に一致するなど、明確な証拠が必要です。
近年の主なトレパク事例
2022年には、人気イラストレーターによるトレパク疑惑がSNSで大きな話題となりました。また、2025年には漫画家の江口寿史氏がトレース疑惑について言及され、著作権や肖像権の観点から議論が巻き起こりました。
これらの事例から分かるのは、疑惑が浮上すること自体が作家の社会的信用に大きな影響を与えるということです。たとえ法的に問題なしと判断されても、炎上によるイメージ悪化は避けられません。
トレパクと参考・オマージュの違い
創作において、既存の作品を「参考」にすることは一般的です。問題は、その度合いです。
- 参考:複数の資料からアイデアを得て、自分なりの表現で描く
- オマージュ:尊敬の念を込めて、元ネタを明示した上で引用
- トレパク:元の作品をなぞり、自分の作品として発表
境界線は曖昧ですが、「他者の独創的な表現」をそのまま使っているか否かが判断のポイントになります。
クリエイターと読者が知っておくべきこと
クリエイター側は、参考資料を使う際は複数の資料を組み合わせ、自分なりの解釈を加えることが重要です。また、著作権フリーの素材を活用したり、自分で撮影した写真を使用したりすることで、リスクを回避できます。
読者側は、安易にトレパク疑惑を拡散しないことが大切です。著作権侵害かどうかは裁判所が判断するものであり、第三者が断定できるものではありません。根拠のない指摘は、名誉毀損として逆に訴えられる可能性もあります。
まとめ
東山むつき氏のトレパク騒動は、漫画業界における著作権問題の複雑さを浮き彫りにした事例と言えます。
トレパクは確かに問題ですが、その判断は専門的な知識を要します。類似性だけでトレースと断定することはできず、創作的な表現がどの程度一致しているかが重要です。
クリエイターは他者の権利を尊重し、読者は根拠のない告発を慎む。この双方の姿勢が、健全な創作環境を守ることにつながります。



コメント